マイケル・ポーター著「競争の戦略」は、経営学をたしなんでいる人なら誰でも知っている「5つの競争要因ファイブフォース分析)」と「3つの基本戦略」を広く世に知らしめた経営戦略論の古典的名著である。有名な5つの競争要因を使った分析手法、業界環境ごとに適した戦略の説明、戦略的意志決定(戦略デシジョン)の分析などを約500ページのボリュームで論じている。

1979年に、ポーター氏がハーバード・ビジネス・レビューに寄稿した論文のコンセプトを元に、原書が発売されたのが1980年。そして、日本語訳の本書が1982年に出版されている。ポジショニング派の大家であるマイケル・ポーター氏の原点が、本書「競争の戦略」である。

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ビジネス環境を空から俯瞰したい人におすすめ

本書の前半を締めるのが、かの有名な「5つの競争要因(ファイブフォース分析)」による競争環境の分析方法である。コンセプトがシンプルなため、ビジネス書などではサラッと触れられることが多いが、本書では240ページ程度を裂いて、具体例を交えながら解説されている。ポーター氏の経済学的視点によって、マクロ的に競争環境が解き明かされていく。

後半からは「5つの競争要因(ファイブフォース分析)」を軸に、戦略に落とし込んでいき、考えられる状況と戦略的意志決定について具体的に学ぶことができる。これらの流れで、はじめはぼんやりとしていたビジネス環境も、俯瞰して遠くまでくっきり見えるような感覚を得られるのである。

ハイライトは「5つの競争要因」と「3つの基本戦略」

まず本書の一番のハイライトは「5つの競争要因(ファイブフォース分析)」である。誰もが聞いたことのあるコンセプトだが、本書で詳細を読み込めば読み込むほど新たな知見を得ることができる。

5つの競争要因

また「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」に代表される「3つの基本戦略」についても、非常に詳しく解説されている。後にポーター氏本人も、この3つの分類だけでは不十分だということに言及しているが、基礎的な戦略知識としては非常に役に立つだろう。

内容は時代を感じさせるが事例も多く具体的

本書では多くの実在する企業の名前をベースに、具体例が紹介されている。しかし、1970年代頃までの企業が研究対象になっており、且つ日本人に馴染みのない企業名が多いため、製品やサービスを創造するのが難しい箇所がある。そのあたりは、読者自身の想像力で補う必要があるだろう。

読書感想

筆者は、はじめてこの本を読了したときに感動して少し放心状態になったほどだ。完全にあなどっていた。

「5つの競争要因(ファイブフォース分析)」や「3つの基本戦略」は、経営学ではお馴染みであり、内容もそこそこ理解しているつもりだった。しかし、本書を読んでみて目から鱗が落ちた。ビジネス環境を遥か上空から、地平まで鮮明に見渡せた気分に陥ったのだ。それはまるで壮大な映画を見終わったときのようで、新しい視点を得たことによる充実感で満たされていた。

本書はビジネスに関わる仕事をしているなら必ず一度は読んでいただきたい一冊である。「5つの競争要因(ファイブフォース分析)」や「3つの基本戦略」を分かったつもりになっていた自分に気付くことができるだろう。

またボリューム感も尋常ではなく、何度でも何年にわたっても読める一冊である。戦略経営を実践するのであれば、手元に置いておきたい一冊になるだろう。



About 古市 大三

ダイゾーコンサルティング株式会社 代表取締役。日本経営士会認定 経営士、WACA認定 ウェブ解析士マスター、および経済産業省認定 応用情報技術者。7年の在米生活を経て、帰国後に起業。WEBデザイナー兼ディレクターを経て、WEBコンサルタントに転向。現在は戦略経営コンサルタントとして活動。その他、セミナー講師やウェブ解析士認定講座の講師も務める。