バレンタインデーは毎年激しい戦いが繰り広げられるイベントであり、多くのプレイヤーがこの日のために長期にわたる準備をしていることだろう。今回は、曜日がマーケティング戦略に大きな影響を与える好例として取り上げたいと思う。

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二種類のギフト需要と自己消費需要

1200億円とも言われているバレンタイン用のチョコレートや洋菓子の需要は、大きく分けて2つある。「ギフト需要」と「自己消費需要」である。そして「ギフト需要」については「本命需要」と「義理需要」に分けることができる。

バレンタインのギフト需要

まず「ギフト需要」は他人にプレゼントをするために購買行動を行う需要である。この需要に内包される「本命需要」と「義理需要」は購入するアイテムが異なる。

大切な人、家族や親しい友人にプレゼントを渡す「本命需要」では、手作り用の食材や包装材が多くを占める。ある程度素材にこだわりつつも、取扱いの楽なものが好まれる。また食材の保存期間の制約もあり、需要はバレンタインデー当日の数日前に急増する。手作り菓子を渡さないケースでは、高級なラインの商品が選ばれやすい。

一方、職場で配る、非計画的に渡す、お客様にオマケとして手渡すなどの「義理需要」では、味や見た目よりもコストパフォーマンスが重視される。食べる対象は男性が多いだろう。既製品を購入することが大半のため、買い置きが可能であり、バレンタインデー当日の1週間以上前から緩やかに需要が増加する。

バレンタインの自己消費需要

「自己消費需要」は、自分や仲間内で消費するために購入する需要である。消費の中心は女性だ。「どうせ食べるなら、いつもは食べない美味しいものを」ということで、通常より趣向を凝らした商品や高級な商品が消費される。近年ではソーシャルネットワークにシェアされたりするので、味のみならず見ても楽しめる商品が好まれる傾向にある。

平日に伸びる「義理需要」と「自己消費需要」

上記のバレンタイン需要の中でも「義理需要」や「自己消費需要」は曜日に大きく影響を受ける。特にマイナスの影響を受けやすい。いずれも消費の場所を選ぶからである。

「義理需要」についてはお菓子を職場や学校などで渡すため、バレンタインデーが平日であれば需要が大きく伸び、休日であれば落ち込む。「自己消費需要」については「義理需要」ほどの影響はないものの、仲間内で共有する機会が減る休日では、平日より需要が落ち込むことが考えられる。

休日に伸びる「本命需要」

一方で「本命需要」ではお菓子をプライベートな空間で渡すため、場所による影響は受けにくい。しかし、バレンタインデーが平日であれば手作りする時間が限られており、需要が伸びにくい。逆にバレンタインデーの前日が休日であれば、準備する時間が確保出来るので需要が大きく伸びる。

バレンタインデーの曜日によるマーケティング戦略

上記で示したとおり、バレンタインデー当日の曜日によって大きく需要が異なり、需要のタイプも異なる。平日であれば「義理需要」や「自己消費需要」が伸び、前日が休日なら「本命需要」が伸びる。

この曜日による需要の違いを戦略策定に活かすのであれば、商品の企画開発が中心となるだろう。「義理需要」が大きく見込めるのであれば、保存が利いてコストパフォーマンスが高く、通常のパッケージに少し捻りを加えたような商品が良いだろう。同時に、単価が低く出荷量が増えるため販売チャネルや物流の見直しも必要かもしれない。

「自己消費需要」が大きく見込めるのであれば、いつもは食べられない特別感と、写真に撮って共有したくなるような見た目やパッケージの付加価値が重要となる。価格は多少高くても、自分や仲間に対する「ご褒美」なので通常より高い単価を見込むことが出来るだろう。

「本命需要」の伸びが見込めるのであれば、チョコレートなどのお菓子以外の周辺需要も想定しなければならない。手作りをするための調理器具や、作り方の書籍、包装素材などの大きな需要も発生する。加えて、お菓子を渡す際の演出やストーリー付けも考えることができるだろう。

もちろんこれらの案は一例である。実際の市場環境はもっと複雑であり、全てのプレイヤーに上記が当てはまるわけではない。自社のマーケティングミックスや環境をふまえた上で、マーケティング戦略を考える必要がある。

曜日がわかれば戦略を策定できる

バレンタインデーは毎年2月14日にやってくる。そして西暦が続く限り、未来のバレンタインデーの曜日は限りなく判明している。つまり、将来の予測が立てやすいということである。

ここでの考え方は、同様に日付が確定しているイベントに対して適用することができる。他社より早く動けば、それだけ有効な手を打ちやすくなる。またそのためのチャネル確保にもいち早く動ける。

自社がバレンタイン需要と関係ない場合でも、同じように日付や曜日で需要が左右されるイベントあるかもしれない。自社のビジネスと様々な日時固定イベントに、関連性がないか調べてみるれば様々な気づきを得ることができるだろう。

 



About 古市 大三

ダイゾーコンサルティング株式会社 代表取締役。日本経営士会認定 経営士、WACA認定 ウェブ解析士マスター、および経済産業省認定 応用情報技術者。7年の在米生活を経て、帰国後に起業。WEBデザイナー兼ディレクターを経て、WEBコンサルタントに転向。現在は戦略経営コンサルタントとして活動。その他、セミナー講師やウェブ解析士認定講座の講師も務める。