全ての戦略には着点が必要である。そして着点に到達する過程を目標によって管理する。ここでは、着点および目標の定義、および戦略との関わりについて述べる。

スポンサーリンク

着点(Goal)の定義

着点(ちゃくてん)とは、物事が到達すべき領域を表す概念である。中世英語の「gol(境界、限度)」を語源に持ち、到達への試みから望まれる結果を表している。戦略の文脈上では「Goal」を「目的」と訳すと不十分な場合が多く、ここでは「Goal」を「着点」または「ゴール」と置き換えて記述する。よって、「着点」は「Goal」と同義ではあるが、日本語の「目的」「目標」とは異なる。

なお「目的」は到達すべき事柄などの結果そのものを指しており、「領域」や「範囲」という概念を有していない。「目的」は達成したかしていないか、または一部を達成したかどうかしか議論することができない。

一方「着点」は、境界を定義に含めることによって、着点に到達していない状態や、到達点が着点の中心からどれだけ離れているかをも認識することができる。この境界のことを「着点境界」、その内側の領域を「着点領域」と呼称する。これらの概念により「着点を通り越した」「着点の範囲が間違っていた」など、着点に対する深い考察が可能となる。

目標(Objective)の定義

目標とは、物事が到達すべき過程において中継的に存在する基準点であり、現実に存在し定量的であることが多い。一つの着点ごとに複数の目標があり、目標の達成は必ずしも絶対条件ではない。単一の着点に到達するために、一部の目標や、または目標を達成することなく到達する場合もある。「Object」は、ラテン語「Objectum(投げつけられる対象)」を語源に持ち、可視的な物質としての存在を指している。転じて、「Object」は「対象物」の意味を持つようになった。また「Objective」は「Object」の可算名詞および形容詞であり、「Target(的)」と同等の意味を持っている。ここでは「Objective」を「目標」および「対象」と置き換えて記述する。

戦略着点の定義

戦略着点とは、その戦略において到達すべき認知可能な領域を指す。領域であるため、戦略着点の内側に到達していれば、戦略遂行に成功したと言える。戦略着点の中心に到達できる場合もあれば、着点の要件ギリギリに収まる場合もある。いずれも戦略着点の要件を満たしていれば、戦略着点に到達したとみなすことができる。

戦略着点には、「全社戦略着点」「事業戦略着点」「作戦戦略着点」などが存在する。なお、機能別組織に代表される機能戦略は、ここでは機能別の作戦戦略と解釈し、「機能戦略着点」と「作戦戦略着点」を同義として扱う。「全社戦略着点」は複数の「事業戦略着点」または戦略を必ずしも伴わない「事業目標」で構成され、「事業戦略着点」は複数の「作戦戦略着点」または戦略を必ずしも伴わない「作戦目標」で構成される。これらが戦略構造上の着点と目標の関係性である。

作戦戦略着点と作戦目標の関係性

作戦戦略着点は、その戦略の要件により領域として定義される。遂行範囲については、その作戦が定めた範囲のみを対象とする。一般的に作戦部隊は、複数の「作戦目標」に到達しながら、作戦戦略着点に近づいていく。

作戦部隊は「タスクフォース」や「プロジェクトチーム」などと呼ばれ、該当する作戦戦略の遂行責任と作戦のために与えられた経営資源の配分権限を持つ。作戦部隊は与えられた経営資源を適時駆使しながら、作戦目標への到達と作戦戦略着点への到達を目指す。

特定の作戦目標に到達できなかった場合でも、作戦戦略着点を変更しない限りは作戦目標を柔軟に変更することが可能である。作戦部隊のリーダーは、随時経営資源を考慮しながら作戦変更を行い、それらの一切の権限を有する。

作戦戦略着点と作戦目標

上長である事業部長などの主な権限は、作戦部隊の人選と経営資源の確保分配である。また同様に人員配置と経営資源の分配に対する責任も生じる。事業部長が作戦戦略遂行に不満がある場合や問題がある場合に行えることは、作戦部隊の人員の再配置と経営資源の再分配のみである。

事業部長が直接作戦目標や戦術に口出しを行えば、責任と権限が不明瞭になり、作戦部隊の士気低下や事業部長に対する不信を招く結果になる。よって、事業部長から作戦部隊に対する直接の指示は避けることが望ましい。ただし、経営資源の運用責任を負っているので、人員が不足している場合は前線に立ち、作戦の指揮を取ったり、部隊の一員として行動することも求められる。

事業戦略着点と作戦戦略着点の関係性

事業戦略着点も、その戦略の要件により領域として定義される。遂行範囲については、その事業が定めた範囲のみを対象とする。言い換えると、事業領域内においての戦略遂行になる。一般的に、作戦戦略着点は事業戦略着点に到達するための絶対条件となる場合が多い。また戦況の変化や競合企業の作戦により、作戦戦略着点への到達が無効になる場合もある。それぞれの作戦戦略が同時に遂行され、望ましいタイミングで事業戦略着点に攻め入ることが求められる。

事業戦略上の作戦が成功しなかった場合は、新たな作戦の発案、あるいは事業戦略自体を再考する必要がある。事業部長は、全社戦略によって事業に与えられた経営資源を駆使し、人選と資源の分配を行い、策定した作戦による事業戦略着点への到達責任を負う。

事業戦略着点と作戦戦略着点

事業部制組織では、事業部の中でほとんどの機能を有する。つまり、それぞれの事業部で価値連鎖の多くをカバーしている。よって、機能単位やプロジェクト単位である作戦行動と比較して複雑になり、価値連鎖が破綻しないよう考慮する必要がある。

事業部長の役割は、常に作戦部隊の最前線を把握し、それぞれの作戦が障害なく運用され、経営資源が枯渇しないように統制を行うことにある。また、事業全体のリーダーシップを取り、事業部全体の士気やモチベーションを保ち、すべての作戦が円滑に遂行されるようにサポートを行うのが、事業部長に求められる。これらの全ての行動は、事業戦略着点の要件に基づく。

経営資源が限られている場合は、事業部長自ららが一部の作戦部隊長を兼務する。この場合は事業戦略着点、作戦戦略着点、戦略目標の混同に十分注意しなければならない。事業部の構成人員が、戦略着点と戦略目標の構造と関係性を把握していない場合は、遂行に混乱を招きかねない。



About 古市 大三

ダイゾーコンサルティング株式会社 代表取締役。日本経営士会認定 経営士、WACA認定 ウェブ解析士マスター、および経済産業省認定 応用情報技術者。7年の在米生活を経て、帰国後に起業。WEBデザイナー兼ディレクターを経て、WEBコンサルタントに転向。現在は戦略経営コンサルタントとして活動。その他、セミナー講師やウェブ解析士認定講座の講師も務める。