ストック」と「フロー」という表現は、経済・会計・ビジネスなどにおける文脈でしばしば使用される。「ストック(Stock)」はある一時点での貯蔵量を表す。また、一定期間の流量を表す「フロー(Flow)」には「インフロー(流入、Inflow)」と「アウトフロー(流出、Outflow)」があり区別する。

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概要

「ストック」は貯蔵量を表し、ある瞬間の量を切り取って表現している状態である。一方、「フロー」は流量を表し、ある特定の期間における流量を表現している。

風呂で例えると、風呂桶に溜まった水の量が「ストック」、蛇口から風呂桶に注がれる水の流量が「インフロー」、そして排水溝から下水に流れ出る量が「アウトフロー」となる。

蛇口から水が出る勢いの方が、排水溝から流れ出る量に勝っている場合は、風呂桶の水量が時間の経過と共に増加する。逆に、排水溝から流れ出る量が、蛇口の水より多い場合は、風呂桶の水は徐々に減少する。

ストック(Stock)

ストックである風呂桶の水の量は、常に特定の瞬間の状態を表している。ある時点での水の貯蔵量が100リットルだった場合、その数字だけを見ても、増えているのか減っているのかなど時間軸が前後した場合の量を知ることは出来ない。仮に、10分前の貯蔵量が50リットルだと分かった場合でも、5分前の状態を特定する方法がない。

フロー(Flow)

一方で、フローである蛇口からの流入量と排水溝からの流出量は、瞬間ではなく期間の量を表している。1分間で5リットルの水が増えた場合、流量は毎分5リットルとなる。しかし、これだけの情報ではインフローとアウトフローを推測することが出来ない。「インフロー毎分5リットル、アウトフローなし」と「インフロー毎分105リットル、アウトフロー毎分100リットル」はいずれもフローが同じ毎分5リットルとなる。つまりフローの実体を正確に捉えるためには、インフローとアウトフローの双方を知る必要がある。

ストックとフローの単位

通常は、ストックの単位に時間軸の単位を加えたものが、フローの単位となる。上記の例であれば、ストックの単位が「リットル」で、フローの単位が「リットル毎分」となる。

ストックとフローの使用例

経済・会計・ビジネスなどにおける文脈で使用される場合、以下のとおりに対応する。

銀行口座

  • ストック:口座残高
  • インフロー:預け入れ、受取利息
  • アウトフロー:引きだし、手数料

在庫管理

  • ストック:在庫量
  • インフロー:仕入高
  • アウトフロー:売上原価

財務諸表

  • ストック:繰越利益剰余金
  • インフロー:収益
  • アウトフロー:費用

経営判断におけるストックとフロー

経営では、見かけ上のフローである収益(売上債権など)や費用(仕入債務や減価償却費など)と、実際の現金のフローである収入(現金の入金など)や支出(現金支払いや借入返済など)が異なり、見かけと実際の資金の動きに誤差が生じる。また、貸借対照表で表されるストックについては、見かけ上および実際の資金の動きが反映された、ある一時点においての状態を確認することが出来る。

売上が売掛金で計上されていても現金として回収が出来ていなければ、つまり実際の現金のインフローが生じていなければ、手元のストックである現金預金が増加しない。一方で、仕入の支出や借入返済を行えば現金のアウトフローが生じ、ストックとしての現金預金が減少する。この場合、見かけ上のフローがプラス(インフロー>アウトフロー)でも、実際の現金預金のフローはマイナス(インフロー<アウトフロー)になり、資金ショートを引き起こす可能性が高まる。

戦略経営におけるストックとフロー

戦略経営においては、資金の動き以外についてもストックとフローの概念が利用される。戦略とはストックである経営資源を配分することであるが、戦略遂行によって経営資源のフローが生じ、将来の経営資源に影響を与える。その影響に適切に対応するためには、ある特定の将来に必要な経営資源を生み出すフローを、現時点のストックを活用して設計する必要がある。

人事のストックとフロー

人事においては、人材の採用や退職はフローであり、人員配置はストックである。また特定の技術を持った人材の増加率はフローであり、その技術を持った人材の総数がストックである。

戦略経営における人事では、戦略に従って採用や人材育成を行う。その場合に時間軸を考慮する必要があり、ある特定の時点において必要な人事ストックを確保するために、人事フロー活動を行う。特に採用などの人事フローは、中長期における戦略に基づいて行われる必要がある。

顧客のストックとフロー

顧客においては、新規顧客開拓や客離れはフローであり、既存顧客数や会員数はストックである。狭義では、来店客がフローであり、延べ来店者数がストックである。

顧客インフローである新規顧客の獲得には、広告費や営業費などの経営資源が多く消費される。また、顧客マイナスフローである顧客離れに対しても、経営資源を投入して低下させる必要がある。このように顧客フローをプラスに保つ(顧客インフロー>顧客アウトフロー)ことが必要となる。

顧客フローをコントロールするために、多くの経営資源を投入する必要がある一方で、顧客ストックは維持に顧客フローほど経営資源を消費しない事が多い。そのため、顧客ストックは安定的な収益基盤になりやすい。戦略経営では、プロダクトライフサイクルの導入期および成長期には、顧客フローへの資源投入を強め、成熟期や衰退期では顧客ストックの維持に資源投入を行うのが一般的である。

競争市場のストックとフロー

競争市場においては、新規参入がフローであり、競争市場内のプレイヤーの数がストックである。競争市場のフローがプラス、つまり撤退より参入が多い場合は、競争が激しくなる。逆に競争市場のフローがマイナスの場合には、寡占が起こる。また、競争市場のストックが多い場合は、それだけの数のプレイヤーを支えることのできる市場が存在しているか、または継続的な市場の拡大が見込めるということになる。

競争市場のフローとストックを把握することで、市場の魅力や競争の激しさを見極めることができる。



About 古市 大三

ダイゾーコンサルティング株式会社 代表取締役。日本経営士会認定 経営士、WACA認定 ウェブ解析士マスター、および経済産業省認定 応用情報技術者。7年の在米生活を経て、帰国後に起業。WEBデザイナー兼ディレクターを経て、WEBコンサルタントに転向。現在は戦略経営コンサルタントとして活動。その他、セミナー講師やウェブ解析士認定講座の講師も務める。