事業領域とは、事業活動が及ぶ対象を定義した範囲のことである。古典では「物理的定義」「機能的定義」の分類や、エーベルによる三次元事業定義モデルなどが有名である。近年では、社会的役割、思想、哲学、価値観などを基礎に事業領域が定義される場合もある。

スポンサーリンク

事業領域と事業ドメイン

「事業ドメイン」という呼称は、日本において一般的であり事業領域を指している。しかしながら、事業領域の定義が生まれた欧米では「Business Fields(事業フィールド)」や「Business Areas(事業エリア)」と呼ばれる。これは「ドメイン(domain)」という言葉が持つ、「占有された場所」という意味合いと合致しないためである。事業領域とは、市場占有の可否にかかわらず事業の活動範囲を示す表現であり「ドメイン」という呼称は適していない。

「domain」とは「dominate(支配する)」や「domination(統治)」などと同じ語源を持つ言葉である。「domain(領地)」は、特定の勢力によって支配された、あるいは力の及んでいる領域である。よって「Business Domain」と表現した場合、完全に支配した事業領域という表現になってしまう。

この「事業ドメイン」という表現は、ホファーとシュンデルが発表した戦略経営モデルである「ホファー・シュンデル・モデル」に登場するものが元になっている。「ホファー・シュンデル・モデル」では戦略経営の要素の一つとして「Domain(領地)」または「Scope(範囲)」を挙げている。

この「ドメイン」という表現が、日本において普及したと考えられる。

ここでは誤解を避けるために、「事業ドメイン」という言葉を使わず「事業領域」という言葉に統一したいと思う。

事業領域を定義する意義

事業領域を明確に定義することは、以下に示すような様々な利点がある。

  • 「やるべきこと」「やらないこと」が明確になることで経営資源の最適な分配ができる
  • 「やるべきこと」に不足している経営資源や将来必要な経営資源が明確になる
  • 「やらないこと」に投入している経営資源が明確になり再分配することができる

また副次的に、戦略的意志決定の速度が向上し、戦略策定が円滑に行えるようになる。この事業領域が複数集まったものを戦略事業単位(SBU: Strategic Business Unit)と呼び、同様にSBUの領域も明確になる。

物理的定義と機能的定義とその広さ

事業領域の定義方法のひとつとして、「物理的定義」と「機能的定義」がある。

物理的定義

具体的な製品やサービスを基点とした定義を、物理的定義と呼ぶ。モノ欲求やウォンツ欲求とも、密接に関連している。「物理的」というものの、必ずしも物理的であると限らないことに注意が必要である。

物理的定義は、事業領域が非常に明確になる一方、存在していない製品やサービスを定義することが出来ないため、事業領域が狭くなる傾向にある。

機能的定義

解決すべき問題や満たすべき欲求を基点とした定義を、機能的定義と呼ぶ。コト欲求やニーズ欲求と密接に関連している。

機能的定義は、事業領域の解釈の余地が広いため、事業領域が広がりすぎる危険性がある。一方で、既存の製品やサービスを超えた事業の拡張が可能になる。

定義例

  • 物理的定義:マッサージ
  • 機能的定義:身体の痛みからの開放

三次元事業定義モデル

1980年にデレク・エーベルが提唱した事業領域の定義フレームワークである。「エーベルモデル(Abell’s Model)」や「エーベルの三次元枠組み」とも呼ばれる。以下に挙げる3つの軸を、事業を定義するために利用する。

  • 提供された顧客グループ(Served Customer Groups)
  • 提供された顧客機能(Served Customer Functions)
  • 利用した技術(Technologies Utilized)


About 古市 大三

ダイゾーコンサルティング株式会社 代表取締役。日本経営士会認定 経営士、WACA認定 ウェブ解析士マスター、および経済産業省認定 応用情報技術者。7年の在米生活を経て、帰国後に起業。WEBデザイナー兼ディレクターを経て、WEBコンサルタントに転向。現在は戦略経営コンサルタントとして活動。その他、セミナー講師やウェブ解析士認定講座の講師も務める。