戦略策定(Strategic Formulation)とは、戦略を構成する2つの過程のうちのひとつである。一般的に、戦略が遂行(Implement)される前に戦略の策定が行われる。また戦略遂行の結果をもとに、再度戦略が策定される場合もある。戦略策定では、戦略立案によって生み出されたざまざまな案を、戦略思考によって統合し、案と案をつなぎ合わせた面として「策」が生み出される。最終的に、複数の方策に対して一連の戦略的意志決定(Strategic Decisions)が行われ、戦略として策定されるのである。

戦略策定

経営においては、戦略策定がその組織の中長期的な結果を決定付ける要因になるため、戦略的意志決定を行う権利に伴う責任が、経営者あるいは経営陣に課せられる。一般的に大きな組織では、最高経営責任者(CEO: Chief Executive Officer)の意志決定により戦略を策定し、最高執行責任者(COO: Chief Operating Officer)によって戦略遂行の指揮がとられる。

戦略策定の有効性は、戦略立案の量と戦略思考における質によって左右されやすい。戦略立案と戦略思考は、相互に補完し合う関係にあるが、いずれか一方しか行われない場合もある。この戦略策定の行程は、小規模であれば経営者自身の思考として行われ、中大規模であれば役割分担された複数の個人または複数のグループで行われる。

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個人で完結する戦略策定

戦略が経営者個人の思考のみにおいて策定される場合は、戦略思考において複数の視点から多面的に事象を捉えることが困難であり、戦略思考の質が限定される傾向にある。

一方で、いち個人の思考の中で戦略立案が完結するので、戦略立案と戦略的意志決定の速度は向上する。戦略立案における分析の過程では、日々の経験や肌感覚の他に、二次データを基に、立案と反証のサイクルが繰り返される。また、戦略立案において情報の出力が省かれる場合も多く、戦略策定速度の向上に寄与している。ただし、戦略立案における出力が必要無い場合も多いがために、戦略立案を行うことなく、戦略思考のみで戦略遂行に至るケースもしばしばみられる。

経営者個人で戦略策定を行った場合は、戦略遂行において、その個人の能力や技術が前提になりがちである。よって、戦略遂行の過程において、他者を包含する経営資源を利用する場合には、それらの遂行能力を加味する必要がある。

個人で完結する戦略策定は、他者を巻き込んだ多面的な戦略遂行に向いていない一方で、個人で策定および実行を行う速度や戦略サイクルの回転数においては秀でている。特に、経営者自身が明確な経営哲学や、ビジョンを持っている場合には、戦略策定から戦略遂行までの速度が著しく向上する。よって市場競争の変化が激しく、経営における意志決定が一刻を争う場合には有効である。同様に、市場競争の不確実性が高く、戦略遂行速度が市場占有率を大きく左右する場合においては、中規模以上の組織でも経営者個人で策定が完結した戦略を採用する場合もある。

複数の個人による戦略策定

戦略が複数の個人で行われる場合は、策定および遂行の速度を多少犠牲にしながらも、戦略立案の量および戦略思考の質において個人のそれを上回る傾向にある。一般的には、組織の最高責任者を中心として、各部門の長が集まり、戦略立案を行う。いわゆる、U型(Unity Form)構造組織における戦略立案である。

経営者および役員が持つ経営に関するマクロ的な視点から、各部門長が持つ実務や営業活動に関するミクロ的な視点を持つことができ、特定の事象を多面的に捉えることが可能になる。言い換えると、各部門長や専門的知識を持つ人材の視点を、戦略思考において積極的に採用しない場合は、複数の個人で戦略を策定する利点を無効にすることになる。複数の視点による多面的な事象のとらえ方は、戦略立案の量においても有利に働き、質と量の両方で戦略策定の精度を高めることが可能となる。

中小規模の事業体または組織においては、戦略策定と遂行の速度を比較的高い状態で保つことができ、複数の個人で迅速な意志決定を行うことは、市場競争において非常に有効な手段である。一方で、経営者や最終的な意志決定者個人における戦略思考の裏付けとしてのみ複数の個人から意見を募る場合は、裏付けに必要な情報の取捨選択が行われ、視点が欠如することが起こりやすい。その場合は、単純に戦略の策定と遂行速度を落とし、複数の個人で戦略策定を行う利点が損なわれる。

複数のグループによる戦略策定

組織体が大規模になった場合には、上記の複数の個人による戦略策定が拡張する形で行われる。また、戦略的意志決定も経営者個人ではなく、経営陣や取締役会によって実行される。大規模で複雑な事業体では、戦略立案の工程も複雑になる傾向が強く、多面的な立案が得られる一方で、戦略思考による統合が困難になる。また、策定から遂行までの期間も中小規模の組織体のそれより長くなる傾向にある。

大規模な組織での戦略策定では、全社戦略などの上位戦略に基づいて、各事業ごとの戦略が策定される。全社戦略の策定においては、意志決定速度も求められる場合が多く、経営者を取り巻く複数の個人による戦略策定が採用される。一方で、事業ごとの戦略策定は、組織体の規模が大きくなればなるほど複数のグループによる戦略策定が行われる傾向にある。一般的には、M型(Multi-divisional Form)構造組織にみられる戦略策定方法である。

複数のグループによる戦略策定では、各事業部ごとで縦割りの戦略策定が行われてしまう危険性をはらんでいる。その場合は、戦略立案のみが形式的に行われ、戦略思考が阻害される。また、全社戦略への統合も辻褄合わせになってしまう。組織が大規模な場合は、各グループ内での遂行の統制が重んじられるので、予測のしやすい既存の戦略の延長線上で戦略立案される場合も多い。その場合は、全社戦略との整合性を確保することが出来ず、結果、戦略自体が無効となってしまうのである。組織の規模が大きくなり、戦略策定に関わる人物が多くなればなるほど、戦略立案のみに偏ってしまいやすいことに留意しなければならない。

戦略策定(以下、英語版 Wikipedia 抄訳)

戦略策定の過程では、まずその組織が身を置いている環境の分析が行われ、続いてその組織がどのように市場競争に勝ち抜いていくかについての一連の戦略的意志決定(Strategic Decisions)が行われる。策定では、一連の着点(ゴール)または目標に帰結し、それらを達成するために組織が評価される。代表的な環境分析の手法は、以下のとおりである。

  • PEST分析またはPESTLE分析:政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)、法律や規制(Legal)、環境やエコロジー(Environmental)などの市場競争の外にある外部環境の分析。
  • ポーターの五力分析:敵対的企業との競争、買い手の交渉力、供給企業の交渉力、新規参入の脅威、代替品の脅威から産業の環境を分析。
  • 内部環境分析:その組織の持つ経営資源における強みや弱みを分析。

戦略的意志決定は環境の評価に基づく洞察を基礎とし、その組織がどのように競争に打ち勝つかという下記のような質問に対する答えを出すことである。

  • その組織の事業とは何か?
  • その組織の製品やサービスを利用するターゲット顧客は誰なのか?
  • 顧客はどの場所でどのようにして購入するのか?そして顧客が「価値」と感じるものは何か?
  • どの事業、製品やサービスがビジネスポートフォリオに含まれるべきか?または含まれるべきではないか?
  • 事業の地理的な範囲はどこまでか?
  • 顧客やステークホルダーの目から見て、その組織と競合他社を差別化するものは何か?
  • どのようなスキルや能力が組織内で醸成されるべきか?
  • その組織にとって重要な機会やリスクは何か?
  • その組織は基礎となる事業と新規事業においてどのように成長することができるか?
  • その組織はどのようにして投資家に対する価値を高めることができるか?

これらの質問や他の戦略的質問の答えが、その組織の戦略の結果として表れ、また、短・長期的着点(ゴール)や目標と関連した評価方法となる。


出典

上記コンテンツは古市大三によるWikipedia:en:Strategic management (22 August 2015, at 18:09 UTC)の抄訳を含んでいます。抄訳された箇所は、GFDLおよびCC-BY-SA 3.0ライセンスの条項を満たす場合のみ利用可能です。



About 古市 大三

ダイゾーコンサルティング株式会社 代表取締役。日本経営士会認定 経営士、WACA認定 ウェブ解析士マスター、および経済産業省認定 応用情報技術者。7年の在米生活を経て、帰国後に起業。WEBデザイナー兼ディレクターを経て、WEBコンサルタントに転向。現在は戦略経営コンサルタントとして活動。その他、セミナー講師やウェブ解析士認定講座の講師も務める。