集中深化(Focus and Deep)とは、戦略経営において限られた経営資源を分配する場合に、特定の事業領域や事業機能に集中して投入し、そのものの洗練や革新によって価値そのものを深めること、およびそのような考え方を指す。一般的に「フォーカス・アンド・ディープ」とも呼ばれる。事業における特定機能の集中深化は、競争力を高め、付加価値を生み出す源泉となる。なお、この記事の執筆時(2015年9月10日時点)で「集中深化」という単語が検索エンジンの検索結果で該当しないため、筆者独自の訳語である可能性が高い。浸透していない言葉のため、「集中深化」という言葉を使う場合は、言葉の意味の説明も添えることをおすすめする。

マーケティング分野においても、標的市場の選定においてセグメンテーションを行い、ターゲティング時に集中型ターゲティングを行った場合は、特定の顧客ターゲットに対する集中深化を行ったと言える。

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集中深化の過程

集中深化は「目標設定」「集中」「深化」「評価」の4つの段階を伴う。そのうち「集中」と「深化」の段階において、一方のみを行う場合は集中深化とは呼ぶことが出来ない。また集中と深化のそれぞれが異なる領域で適用された場合も同様に集中深化と呼ぶことが出来ない。集中と深化のそれぞれの段階は、同一領域または同一機能において実行される場合に、集中深化と呼ぶことが出来る。

集中深化(フォーカス・アンド・ディープ)

 

目標設定

目標設定の段階では、まず集中深化を行う着点(ゴール)を確認し、それに基づいて目標を設定する。事業そのものの集中深化を行う場合には、全社戦略の着点(ゴール)が目標設定の基準となる。また、特定事業内の機能そのものを集中深化させる場合には、事業戦略の着点(ゴール)が目標設定の基準となる。いずれにおいても、何らかの戦略着点(ゴール)が存在しない場合には、集中深化を進めることが困難となる。目標設定は、数値化できるものであれば、より評価がしやすくなる。

集中

集中の段階では、前述した戦略着点に基づいて、経営資源を集中的に分配すべき領域または機能を限定する。そのように限定された領域や機能においては、事業戦略上の重心(Center of Gravity)になるのが一般的である。もし集中深化する領域や機能が、戦略着点において大きな意味を持たない場合は、集中深化する領域や機能を再検討する必要がある。

深化

深化の段階では、価値連鎖におけるいずれかの箇所の競争力を高めることが求められる。どのようにして「深さ」を生み出すかは、戦略思考によってのみ実現される。また進化の方向性は、戦略着点に従う必要がある。深化を達成するためには、経営資源を消費するので、多くの場合に時間的制約が設けられる。

評価

評価の段階では、集中深化の目標に対して、期待していた結果が得られたかどうかを評価する。市場競争においては、集中深化の結果が市場占有率や利益率に反映される傾向が強い。集中深化の前後を比較して評価を行うため、集中深化を行う前の状態も記録しておく必要がある。

事業規模と集中深化

集中深化は、経営資源が限られている場合において非常に有効である。また、経営資源が潤沢にある場合でも、経営資源の無駄な消費を抑える効能がある。

マイケル・ポーターが著書で述べた一般事業戦略(Generic Strategy)の三類型の中では、いずれの戦略を採用する場合も集中深化を行うことで実現が可能である。生産や物流などの事業オペレーションの特定機能について、コスト削減を実現すればコストリーダーシップ戦略となる。また商品の特定機能に対して集中深化を行えば、差別化戦略となる。

フィリップ・コトラーによるマーケティングの地位戦略における、「チャレンジャー」や「ニッチャー」が取る戦略も、差別化を行う中で集中深化を採用している。

小さな事業規模における集中深化

中小零細企業や小規模事業においては、常に経営資源が不足している状態にある場合が多いので、集中深化を行うことが多い。

集中深化を行うことで効率的に経営資源を利用できる一方、経営資源が手薄になる領域で問題が起きる可能性も高まる。よって、経営資源が限られている環境での集中深化は、集中深化させない箇所にほころびが生じないか注意深く観察する必要がある。

大きな事業規模における集中深化

大企業や大規模事業においては、潤沢な経営資源があるため集中深化が上手く機能しない場合がみられる。特に市場競争のリーダーは、マーケティングの地位戦略として「全方位(フルライン)戦略」を採用することがあるため、守備範囲の穴を埋めるために経営資源を消費してしまう。

一方で、集中深化が有効に機能した場合、潤沢な経営資源も相まって、深化の段階をより深めることが可能になる。つまり、市場での強者はいち早く競合他社の集中深化を探知し、同じ領域で競合に勝る集中深化を行うことが鍵となる。



About 古市 大三

ダイゾーコンサルティング株式会社 代表取締役。日本経営士会認定 経営士、WACA認定 ウェブ解析士マスター、および経済産業省認定 応用情報技術者。7年の在米生活を経て、帰国後に起業。WEBデザイナー兼ディレクターを経て、WEBコンサルタントに転向。現在は戦略経営コンサルタントとして活動。その他、セミナー講師やウェブ解析士認定講座の講師も務める。