ROA資産利益率、あーるおーえー:Return On Assets)とは、経営分析において、経営の資産(Assets)からどれだけの利益を生み出したかを求めるための指標である。計算方法は、損益計算書の利益を、貸借対照表の資産の部で割ることで求めることが出来る。ROE(Return On Equity)と並んで、ROI(Return On Investment)の一種として分類される。ROAの数値は、高い方が好ましい。

戦略経営において、活用されない無駄な資産があることは、戦略遂行の足枷になりかねない。逆に資産を無駄なく活用出来ていれば、少ないコストで戦略の遂行が可能となる。経営資源を金額で算出した総資産(Assets)において、全社的に収益性および効率性を知ることができる。また、事業ごとに資産を区別することが可能な場合は、事業別や店舗別のROAを算出することが可能となる。

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ROAの役割

ROAは、戦略経営において調達した資金の運用状態である資産を活用して、どれだけ利益を創出しているかを確認するための指標として利用される。企業が保有している資産(Assets)が、ちゃんと利益を生み出せているのか、つまり事業の売上に対する収益性と資産運用の効率性が健全に保たれているかを知ることができる。

なお、「総資本利益率」と記述される場合もあるが、総資本は負債と純資産の合計であって、資産(Assets)ではない。総資産と総資本は同じ金額にはなるが、意味合いとしては間違っている。総資本(=負債+純資産)は、資金をどのように調達したかを示しており、どのように運用しているかは明らかにならないので注意が必要である。

ROAの改善と戦略の関係性

ROAの数値を高めるためには、利益を増やすか、資産を減少させる、またはその両方を行う必要がある。

利益を増やす方法としては、大きく3種類ある。まず、費用を維持したまま商品単価を上げる、つまり既存市場で付加価値を生み出したり、付加価値を感じる別の市場で適正な価格で販売したりすることが考えられる。次に、価格を維持したまま費用を圧縮する、つまりオペレーションの改善やサプライチェーンの見直しなどが考えられる。もう一つは、固定資産の稼働率を上げる、つまりオフシーズンなどで稼働率が下がっている設備を活用することで、利益を増やす方法である。

資産を減少させる方法としては、使っていない不動産や設備を売却し、その現金で借入を返済するなどが考えられる。

いずれにしても、戦略着点に沿った方法の選択が必要である。コストリーダーシップ戦略や差別化戦略、ブルーオーシャン戦略をとった場合には、前者のケースでROAが改善することが多い。また、特定事業への戦略的な集中深化を行う場合は、後者のように思い切って資産を処分することも戦略上の選択肢に入る。一方で、ROAの改善だけに主眼が置かれると、有効な戦略オプションが選択できなくなり本末転倒になってしまう。ROAの改善は、あくまで適切に戦略が遂行された結果であることとして留意しなければならない。

計算におけるストックとフロー

計算には「利益」と、「資産」または「資本」の数値が必要となる。「利益」としては、ある一定期間の資金の流量である「フロー」を示す損益計算書(P/L)の利益の項目を利用する。一方、貸借対照法(B/S)の「資産」または「資本」は、一時点で貯蔵されている量を表す「ストック」の性質を持っている。そのため、「資産」または「資本」をフローの性質に近づけるためには、期中平均値を計算する必要がある。

  • 期中平均値 = (期首ストック + 期末ストック)÷ 2

期中平均値を求めるには、期首と期末の残高が必要になる。期首の残高は前期末の残高に置き換えても計算が可能である。もし期中平均値を求めることが出来ない場合は、期末の貸借対照表の数値を用いることもある。

総資産当期純利益率

「総資産当期純利益率」は代表的なROAのひとつであり、「総資産利益率」とも呼ばれる。最終的な利益である「当期純利益」を、全ての資産である「総資産(Assets)」で割ることで求めることが出来る。株主の視点として、企業全体を俯瞰した指標である。

この「総資産当期純利益率」は、当期純利益が営業外損益や特別損益を含んでいるため、単純に複数期にまたがる経営成績を比較するのには向いていない。言い換えると、長期的にROAが一定の値で推移していれば、営業外損益や特別損益等の本業以外の損益の影響が小さいと認識できる。なお、後述する「経営資本営業利益率」は、より本業に焦点を当てたROAとなる。

総資産当期純利益率=当期純利益/総資産

経営資本営業利益率

「経営資本営業利益率」も代表的なROAのひとつである。本業の活動に使われる資産の「経営資本」によって、本業の利益である「営業利益」をどれだけ稼いでいるかを示す指標である。計算方法は「営業利益」を「経営資本」で割ることで求めることが出来る。経営者の視点として、本業を俯瞰するために利用される。

「営業利益」については、損益計算書において「売上高」から「売上原価」と「販売費及び一般管理費」を除いたものである。「経営資本」については、貸借対照表の「資産」から「建設仮勘定」と「投資その他の有価証券」を除いたものとされている。

「建設仮勘定」と「投資その他の有価証券」を除く理由としては、建設中の建物を表した「建設仮勘定」、株の持ち合いなどを含む「投資有価証券」、1年以上現金化される事がない「長期貸付金」など、いずれも利益を生み出すことが難しい資産だからである。

なお「資本」という言葉を含むが、「資産」を指していることに注意が必要である。

経営資本営業利益率=営業利益/経営資本

総資産事業利益率

総資産事業利益率」とは、「総資産」を使って、経常利益から支払利息などの事業外費用および財務活動以外の営業外収益(受取家賃など)を差し引いた「事業利益」をどれだけ稼いでいるかを示す指標である。「事業利益」は、営業利益に財務活動による営業外収益である「受取利息」と「受取配当金」を加えても求めることが出来る。「総資本事業利益率」や「使用総資本利益率」とも呼ばれる。「事業利益」を分子に置く理由としては、総資産が総資本と同等であり、その総資本には他人資本である負債が含まれているため、負債が生み出す支払利息を含めると計算上二重になってしまうから、とされている。

前述の通り「総資産事業利益率」は、総資産が総資本と同額であるという前提があり、ROAの意味合いには沿わないため、使用する場合は注意が必要となる。

総資産事業利益率=事業利益/総資産



About 古市 大三

ダイゾーコンサルティング株式会社 代表取締役。日本経営士会認定 経営士、WACA認定 ウェブ解析士マスター、および経済産業省認定 応用情報技術者。7年の在米生活を経て、帰国後に起業。WEBデザイナー兼ディレクターを経て、WEBコンサルタントに転向。現在は戦略経営コンサルタントとして活動。その他、セミナー講師やウェブ解析士認定講座の講師も務める。